僕の世界が変わる時 前編 [小説 女セクハラ日記]
「最近、何で私と会ってくれないの?」目の前でオムライスを食べている僕の彼女、鳥居沙紀が少し怒ったように、可愛らしく僕をにらみつける。
「ちょっと忙しくてね。でも、会ってくれないってさぁ、こうやって沙紀とは社員食堂で毎日会ってるんだから・・・」沙紀にはカラオケ屋でバイトしている事は内緒にしているから、バレないように内心ドキドキした。
半年前、同じ部署で働く沙紀に告白された。
彼女は歳も23歳で、僕よりちっちゃくてすごく可愛い女の子だった。
だから、僕は迷わずOKして、彼女と付き合いだした。
付き合いだすと、少しわがままな所はあるものの、それさえも許せるくらい、僕は沙紀が好きになっていった。
「それはそうだけどさ。だけど、会社で直人さんに会ってても、全然つまんないよ」ふくれっ面でそう言うと、ぷいっとそっぽを向いた。
こんな子どもじみた彼女のしぐさも可愛くて、僕は来週の日曜日には会えるからと沙紀の機嫌を取った。
「菊池くん、おはよー」土曜日の朝にバイト先のカラオケ屋に出勤すると、副店長の紗香さんが僕の肩を抱きながら言うと、すぐさま僕から離れて厨房にいる富岡兄弟にも同じ事をする。
この紗香さんは、今まで会った事のないタイプの女性だった。
いつもニコニコして、楽しげで、けど仕事はきちんとやるが、スキンシップの激しさに驚いた。
肩を触るなんて当たり前で、富岡さんたちや、池田さんたち女の子まで出勤してくると抱きつくし、店長の槙村さんに至っては、平気でお尻だって触っているのだから、正直、ここの店のバイトが続くかと不安だったけど、不思議と紗香さんに触れられると、安心して癒される感じがして、嫌いではなかった。
「・・・。つーか、菊池、おまえ、なにやってんの?」うっかりした僕が、ピラフを入れようと置いておいたお皿を割ってしまい、富岡結希が怒鳴りつけた。
「す、すみません・・・」僕が慌てて割れたお皿を片付けていると、その破片で指を切ってしまった。
「結希、大きな声出して何を言ってんの?」結希の声を聞きつけて、紗香さんが厨房に入ってきた。
「こいつが皿割っちゃって・・・」紗香さんには偉そうな口が聞けないのか、トーンダウンして顎で僕を指した。
「あらあら。菊池くん、大丈夫?あ、血が出てるじゃん」しゃがみこんでいる僕に駆け寄ると、紗香さんは制服のポケットからハンカチを出して血を拭いてくれた。
温かな彼女の手が優しく僕の指を包み込む。
「だ、大丈夫ですから」この謎の感情に、何故か僕は罪悪感を感じてしまい、紗香さんの手を振り払ってしまった。
紗香さんは怒ったのか、急に立ち上がって厨房から走り出てった。
「・・・。菊池、怒鳴ってごめんな」富岡靖に促され、結希が僕に頭を下げた。
「ううん。僕の方こそ、ごめんなさい」僕が立ち上がって頭を下げていると、紗香さんが厨房に飛び込んできて、僕にバンドエイドを手渡した。
「菊池くん、良かったら使って」そう言うと、お客さんが来たのか、紗香さんは慌ててカウンターに戻っていった。
そんな彼女の姿を、お礼も言えずに僕は見送った。
そして、バイトも終わり、更衣室から僕が出てくると、ソファでくつろぐ紗香さんが僕にケガは大丈夫かと尋ねてきた。
「大丈夫です。あ、あの、お皿を割ってしまって、すみません」僕は槙村にそう言った。
「ああ、いいよ。誰でもバイト始めた頃は慌てるからしょうがないよ。これからは気をつけてね」と槙村が優しく微笑みながら、僕の顔を見た。
槙村は目がやや大きすぎる感じがして、尖った鼻先や酷薄そうな薄い唇の割には、性格は良さそうだった。
「マキったら、余裕じゃん」紗香さんが槙村をつっつきながらからかった。
「ホントっすよ。いつも店が忙しいと、一番テンパるのはマキさんなのに」と結希が言うと、そこにいる僕以外の人は大笑いしていた。
僕は疎外感を感じたが、紗香さんにはバンドエイドのお礼を言わなきゃと思い、彼女にお礼を言った。
「そんな事いいのよ、菊池くんのキレイな手に傷がついたら、ショックだもん・・・。ホント、大したことなくてよかったよ」紗香さんはソファから体を浮かせて、僕の体を抱きしめた。
紗香さんの体のぬくもりが、何故か僕を赤面させた。
「わっ。お、お、お先に失礼します!!」僕は紗香さんの体を引き離すと、上ずって情けない声で言いながら、慌てて事務所から出た。
走って店から出て、車に駆け込んで息を整えた。
一体、あの人はなんなんだ?!
どうして、あんなに簡単に男に抱きつけるんだ?
僕の事が好きなのか??
だけど、抱きついているのは、僕だけじゃないし・・・。
なんだか頭が混乱して、すぐに帰宅する気にならずに、僕は少し時間をかけて海まで車を走らせた。
カーステからは一人の時によく聴いている音楽が流れていたが、歌詞がほとんど耳に入らずに、曲に耳を澄ませていた。
翌日、寝不足の体を引きずって、僕はカラオケ屋のバイトに向かう。
「おっはよー、菊池くん!!」タイムカードを押しに事務所に行くと、紗香さんが自分のデスクに向かって仕事をしていた。
「あ、おはようございます・・・」昨日の事もあり、どういう態度で接すればいいかわからなくて、声が少し低くなった。
「どうしたの?大丈夫?調子が悪いの?」紗香さんは立ち上がり、僕に近づいてくる。
僕の体に触れているわけではないのに、彼女が側にいるだけでとても暖かく感じた。
「菊池くんは本職があるんだから、そっちの方に支障がないようにね」そっと僕の肩に手を置くと、またデスクに戻っていった。
「は、はい。大丈夫です」紗香さんの手が置かれた肩がとても熱い。
僕の顔もとても熱い。
その時、僕の脳裏に沙紀の顔が浮かんだ。
そうだ。僕には沙紀という彼女がいるんだ。
それなのに・・・。
「あ、ねぇ。菊池くんのメアド、教えてよ」デスクから体を離し、背伸びをしながら紗香さんが言った。
「えっ・・・?あ・・・、っと、彼女がいるから・・・」僕には沙紀がいるんだから、断って当然だと思った。
「あ、そっか・・・。だよねぇ」紗香さんは一瞬だけ寂しそうな表情をしたが、すぐにいつもの笑顔に戻って、さすが、ラブラブだわ~と笑った。
彼女のキャラクターなら、しつこく聞いてくると思っていたから、この引き際の良さが少し意外に思えた。
「菊池くん、今度の臨時休業に君の歓迎会と称してただの飲み会をやるけど、勿論参加するよね?」厨房に向かおうと、事務所から出ようとしている僕の背中に彼女の声がぶつかった。
「えっ?!僕はお酒が飲めないんだけど、それは強制ですか?」お酒が苦手だから、あまり飲み会の席は好きではなかった。
「うん。強制。だって、菊池くんの歓迎会だよ?主役がいなくて、どうすんの?飲めないなら、たくさん料理の食べれるとこを予約するから、食べに徹したら?」いたずらっぽく微笑む紗香さんは、デスクを整理しながら立ち上がった。
「そうですね。わかりました」もっと強く断っても良かったのに、何故か僕の口からは肯定の返事が出た。
「今日もお願いね」僕に近づいてきた紗香さんは、肩を強く抱いてカウンターに向かっていった。
・・・。
だから、一体、なんなんだ、あの人は!?
と僕は心の中で叫んでいた。
いかがでしたか?
このお話は、モバゲーの方には載せてないものです。
一応、主役のつもりの槙村を差し置いて、菊池の登場です(笑)
モバの方だと、前回のオーナー登場からこの次に書くお話になってしまい、思いついたって事もあったのでこの作品を書いてみました。
まだ前編ですが、次の作品を挟んで後編を書いていくので、良かったら読んでやってください。
さて、キャラたちの好きな曲を紹介しますが、今回はこの作品と、Brownieさんのリクエストも合わせまして(笑)菊池の好きな曲です。
くるり/WORLD'S END SUPERNOVA
沙紀と一緒の時は、彼女の好きな今時の曲を聴いてますが、彼が一人の時はこのくるりを聴いてます。
この曲聴きながら海に行ったり見たりするのは気持ちいいだろうなぁ。
けど、この曲、曲自体は最高なのですが、PVの最後の方にあるボーカルの人のダンスが笑っちゃう(笑)←ロブのダンスで免疫が出来ているので、好きですが(笑)
そんなダンスも含めて、見て聴いてやってください。
ではでは、今回も最後まで読んでくれて、どうもありがとうございます。
良かったら、次回も読んでやってくださいね。
「ちょっと忙しくてね。でも、会ってくれないってさぁ、こうやって沙紀とは社員食堂で毎日会ってるんだから・・・」沙紀にはカラオケ屋でバイトしている事は内緒にしているから、バレないように内心ドキドキした。
半年前、同じ部署で働く沙紀に告白された。
彼女は歳も23歳で、僕よりちっちゃくてすごく可愛い女の子だった。
だから、僕は迷わずOKして、彼女と付き合いだした。
付き合いだすと、少しわがままな所はあるものの、それさえも許せるくらい、僕は沙紀が好きになっていった。
「それはそうだけどさ。だけど、会社で直人さんに会ってても、全然つまんないよ」ふくれっ面でそう言うと、ぷいっとそっぽを向いた。
こんな子どもじみた彼女のしぐさも可愛くて、僕は来週の日曜日には会えるからと沙紀の機嫌を取った。
「菊池くん、おはよー」土曜日の朝にバイト先のカラオケ屋に出勤すると、副店長の紗香さんが僕の肩を抱きながら言うと、すぐさま僕から離れて厨房にいる富岡兄弟にも同じ事をする。
この紗香さんは、今まで会った事のないタイプの女性だった。
いつもニコニコして、楽しげで、けど仕事はきちんとやるが、スキンシップの激しさに驚いた。
肩を触るなんて当たり前で、富岡さんたちや、池田さんたち女の子まで出勤してくると抱きつくし、店長の槙村さんに至っては、平気でお尻だって触っているのだから、正直、ここの店のバイトが続くかと不安だったけど、不思議と紗香さんに触れられると、安心して癒される感じがして、嫌いではなかった。
「・・・。つーか、菊池、おまえ、なにやってんの?」うっかりした僕が、ピラフを入れようと置いておいたお皿を割ってしまい、富岡結希が怒鳴りつけた。
「す、すみません・・・」僕が慌てて割れたお皿を片付けていると、その破片で指を切ってしまった。
「結希、大きな声出して何を言ってんの?」結希の声を聞きつけて、紗香さんが厨房に入ってきた。
「こいつが皿割っちゃって・・・」紗香さんには偉そうな口が聞けないのか、トーンダウンして顎で僕を指した。
「あらあら。菊池くん、大丈夫?あ、血が出てるじゃん」しゃがみこんでいる僕に駆け寄ると、紗香さんは制服のポケットからハンカチを出して血を拭いてくれた。
温かな彼女の手が優しく僕の指を包み込む。
「だ、大丈夫ですから」この謎の感情に、何故か僕は罪悪感を感じてしまい、紗香さんの手を振り払ってしまった。
紗香さんは怒ったのか、急に立ち上がって厨房から走り出てった。
「・・・。菊池、怒鳴ってごめんな」富岡靖に促され、結希が僕に頭を下げた。
「ううん。僕の方こそ、ごめんなさい」僕が立ち上がって頭を下げていると、紗香さんが厨房に飛び込んできて、僕にバンドエイドを手渡した。
「菊池くん、良かったら使って」そう言うと、お客さんが来たのか、紗香さんは慌ててカウンターに戻っていった。
そんな彼女の姿を、お礼も言えずに僕は見送った。
そして、バイトも終わり、更衣室から僕が出てくると、ソファでくつろぐ紗香さんが僕にケガは大丈夫かと尋ねてきた。
「大丈夫です。あ、あの、お皿を割ってしまって、すみません」僕は槙村にそう言った。
「ああ、いいよ。誰でもバイト始めた頃は慌てるからしょうがないよ。これからは気をつけてね」と槙村が優しく微笑みながら、僕の顔を見た。
槙村は目がやや大きすぎる感じがして、尖った鼻先や酷薄そうな薄い唇の割には、性格は良さそうだった。
「マキったら、余裕じゃん」紗香さんが槙村をつっつきながらからかった。
「ホントっすよ。いつも店が忙しいと、一番テンパるのはマキさんなのに」と結希が言うと、そこにいる僕以外の人は大笑いしていた。
僕は疎外感を感じたが、紗香さんにはバンドエイドのお礼を言わなきゃと思い、彼女にお礼を言った。
「そんな事いいのよ、菊池くんのキレイな手に傷がついたら、ショックだもん・・・。ホント、大したことなくてよかったよ」紗香さんはソファから体を浮かせて、僕の体を抱きしめた。
紗香さんの体のぬくもりが、何故か僕を赤面させた。
「わっ。お、お、お先に失礼します!!」僕は紗香さんの体を引き離すと、上ずって情けない声で言いながら、慌てて事務所から出た。
走って店から出て、車に駆け込んで息を整えた。
一体、あの人はなんなんだ?!
どうして、あんなに簡単に男に抱きつけるんだ?
僕の事が好きなのか??
だけど、抱きついているのは、僕だけじゃないし・・・。
なんだか頭が混乱して、すぐに帰宅する気にならずに、僕は少し時間をかけて海まで車を走らせた。
カーステからは一人の時によく聴いている音楽が流れていたが、歌詞がほとんど耳に入らずに、曲に耳を澄ませていた。
翌日、寝不足の体を引きずって、僕はカラオケ屋のバイトに向かう。
「おっはよー、菊池くん!!」タイムカードを押しに事務所に行くと、紗香さんが自分のデスクに向かって仕事をしていた。
「あ、おはようございます・・・」昨日の事もあり、どういう態度で接すればいいかわからなくて、声が少し低くなった。
「どうしたの?大丈夫?調子が悪いの?」紗香さんは立ち上がり、僕に近づいてくる。
僕の体に触れているわけではないのに、彼女が側にいるだけでとても暖かく感じた。
「菊池くんは本職があるんだから、そっちの方に支障がないようにね」そっと僕の肩に手を置くと、またデスクに戻っていった。
「は、はい。大丈夫です」紗香さんの手が置かれた肩がとても熱い。
僕の顔もとても熱い。
その時、僕の脳裏に沙紀の顔が浮かんだ。
そうだ。僕には沙紀という彼女がいるんだ。
それなのに・・・。
「あ、ねぇ。菊池くんのメアド、教えてよ」デスクから体を離し、背伸びをしながら紗香さんが言った。
「えっ・・・?あ・・・、っと、彼女がいるから・・・」僕には沙紀がいるんだから、断って当然だと思った。
「あ、そっか・・・。だよねぇ」紗香さんは一瞬だけ寂しそうな表情をしたが、すぐにいつもの笑顔に戻って、さすが、ラブラブだわ~と笑った。
彼女のキャラクターなら、しつこく聞いてくると思っていたから、この引き際の良さが少し意外に思えた。
「菊池くん、今度の臨時休業に君の歓迎会と称してただの飲み会をやるけど、勿論参加するよね?」厨房に向かおうと、事務所から出ようとしている僕の背中に彼女の声がぶつかった。
「えっ?!僕はお酒が飲めないんだけど、それは強制ですか?」お酒が苦手だから、あまり飲み会の席は好きではなかった。
「うん。強制。だって、菊池くんの歓迎会だよ?主役がいなくて、どうすんの?飲めないなら、たくさん料理の食べれるとこを予約するから、食べに徹したら?」いたずらっぽく微笑む紗香さんは、デスクを整理しながら立ち上がった。
「そうですね。わかりました」もっと強く断っても良かったのに、何故か僕の口からは肯定の返事が出た。
「今日もお願いね」僕に近づいてきた紗香さんは、肩を強く抱いてカウンターに向かっていった。
・・・。
だから、一体、なんなんだ、あの人は!?
と僕は心の中で叫んでいた。
いかがでしたか?
このお話は、モバゲーの方には載せてないものです。
一応、主役のつもりの槙村を差し置いて、菊池の登場です(笑)
モバの方だと、前回のオーナー登場からこの次に書くお話になってしまい、思いついたって事もあったのでこの作品を書いてみました。
まだ前編ですが、次の作品を挟んで後編を書いていくので、良かったら読んでやってください。
さて、キャラたちの好きな曲を紹介しますが、今回はこの作品と、Brownieさんのリクエストも合わせまして(笑)菊池の好きな曲です。
くるり/WORLD'S END SUPERNOVA
沙紀と一緒の時は、彼女の好きな今時の曲を聴いてますが、彼が一人の時はこのくるりを聴いてます。
この曲聴きながら海に行ったり見たりするのは気持ちいいだろうなぁ。
けど、この曲、曲自体は最高なのですが、PVの最後の方にあるボーカルの人のダンスが笑っちゃう(笑)←ロブのダンスで免疫が出来ているので、好きですが(笑)
そんなダンスも含めて、見て聴いてやってください。
ではでは、今回も最後まで読んでくれて、どうもありがとうございます。
良かったら、次回も読んでやってくださいね。
(^-^)//""ぱちぱち
菊池くん、いいねー若い!こいつは簡単だ(笑
歓迎会後はどうなるんだろうね。
彼女がいるからと・・・いやいや、「僕の世界が変わる時」だから、もしかして??昼ドラじゃないわよね(^^ゞ
やっちゃんだから、意外な展開を考えているかもしれないな。
後編、期待してまっす!
by Brownie (2008-07-19 18:28)
Brownieさん、ダブルでありがとうございます!!
どうなっちゃうんでしょうか?(笑)
楽しみにしてやってください。^^
by やっちゃん (2008-07-19 22:38)
yookoさん、nice!をありがとうございます!!
by やっちゃん (2008-07-19 22:39)
最近さらに欲が出てきたらしく、ROCKのみならず
お笑い界への進出をも考えていると聞く。本当であろうか?
by EF135L (2008-07-21 07:13)